市場調査を行い、長期に耐える新築企画提案を行う。

Q:賃貸オーナーへ、新築プロデュース提案やリノベーション提案などを行うことがあるのですが、説得力に欠けるのか良いプレゼンテーションができません。どのような提案をすれば説得力が増すのかを教えてください。

A:物件供給が過剰になればオーナーは積極的な投資を控えるはずです。周辺エリアの市場調査を行い、「本当に必要とされている物件の間取りや設備」を導き出し、「なぜその物件が必要なのか」という、根拠とロジックをもとに提案をしましょう。

<建てる前には「まず調査」>

 人口減少に伴い、賃貸需要も年々減っていくと言われている一方で、ハウスメーカーが施工する賃貸住宅の建築が減ることはない。アパート建築というと、つい利回りやデザインなどに目を奪われ勝ちだが、管理会社の立場からすると、建てることよりも、建てたあとのことが気になる。長期的に安定稼働すれば良いのだが、そもそも需要がないエリアに建物が増えれば、新しい物件に人は移り、やがて供給過剰になり賃料の下落が始まる。この負の連鎖を止めるためには、建築(リノベーション)前に、しっかりとした根拠をもとに計画をしなければならない。そのためには「市場調査」が重要だ。本来、市場調査のような「建てるための根拠」となるようなものは、オーナーに提案をする建設会社が行うべきであるが、実際、賃貸経営をするための詳細な調査は、これまでほとんど見たことがない。何千万円〜数億円もの投資をするのに、根拠のない提案では、人口が減っている状況においては、オーナーもなかなか首を縦に振るはずもない。管理会社は建ててもらうことがゴールではなく、建ててもらったあとのことを一番に考えなければならない。そのエリアに必要とされる建物を提案しなければ、築年数が浅い時は良くても、すぐに稼働率が落ちていくことを管理会社は知っているから。なんの根拠もなく無造作に建てられた物件が、空室だらけになっている現場も地方ではよく目にする。そこで建てるための根拠をしっかりと探らなければならない。

<需要調査>

 市場調査というとどことなく聞こえが良くカッコいいイメージもありそうだが、やっていることは実に地味で手間もかかる。調査は「需要調査」と「供給調査」に分けられる。需要調査については、家族類型別に不動産会社へのヒアリングを行う。

①単身者

②カップル

③ファミリー(第一子が未就学児)

④ファミリー(第一子が小学生以上)

⑤その他(母子家庭、2世帯同居など)

上記のように5つのカテゴリーに分け、来店者割合(または反響割合)をヒアリングする。この時、人によって数字にブレが生じるため、できるだけ実際の来店者データなどを出してもらえるかどうかがカギとなる。

<供給調査>

 供給調査については、該当エリアの物件をくまなく調べることになる。調査範囲は、エリアによって物件密度が違うので毎回違うが、おおよそ1,000室〜2,000室程度を目標にすると良いだろう。大型物件が集中しているような都市部エリアに関しては、1棟が数字に大きく影響をもたらすため、もう少し多めに調査をすることもある。調査方法は下記の通りとなる。

①調査範囲を決めて、住宅地図から賃貸物件をピックアップ

②物件名をもとにインターネットで情報収集(総戸数・賃料・築年数・間取り・専有面積など)

③現地調査(入居率・外観・管理状況・周辺環境など)

④調査結果をもとに分析

⑤製本

調査結果は調べたデータより、多面的な視点から分析された企画提案・市場調査書となる。以前に比べ、インターネットで事前情報収集が容易にできるようになったため、現地での調査時間も大幅に減らせるようになった。

<「建てない提案」をする>

 調査結果は、シングル/ファミリー物件のシェアと空室率、構造別のシェアと空室率、間取り別空室率、築年数別空室率、需給ギャップなど、多面的に分析されたデータをグラフ化している。その結果をもとに、当該エリアに最適な間取りや規模を導き出していく。調査結果によっては、建築やリノベーションを勧めないこともある。無理に進めてしまっては、将来苦戦することが想定される場合は、リスクを伝えプロジェクトを勧めない提案をしっかりと伝える。建てさせることが目的ではないため、やめたほうが良いとハッキリとご提案することは、営業面からするとネガティブに捉えられがちであるが、結果的にオーナーに信頼されるのである。

<まとめ>

 このような市場調査は手間がかかり、調査を専門でやる企業が存在しないため、あまり目を向けられてはいないが、不動産経営の空室リスクが将来的に増す中で、今後市場調査に対する需要が増えると想定される。また2017年度に入り不動産事業への融資が厳しくなりつつある中で、明確な市場調査は、金融機関からの受けもよく、融資の追い風になる。建築・リノベーションなどの大型投資をするときには、このような市場調査を取り入れることで、結果として受注率が高まり、管理会社としても安心して管理を引き受けることができるのだ。

※市場調査手法に関しては、原稿執筆時に在籍をしていたオーナーズエージェント社の手法を記載しています。

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